楽園のカンヴァス  原田マハ著

読書感想文

『旅屋おかえり』の著者でもある原田マハさんは、キュレーターをされていたのでアートに造詣が深い。

出演されていたテレビ番組でもアンリ・ルソーの名画『夢』の愛で方を解説されていた。

そんなルソーをモチーフにしたアートミステリー『楽園のカンヴァス』

第25回山本周五郎賞受賞などを受賞された秀作。

アートに全く関心がなかった私だが、旅好きでもある親しみやすいマハさんのお人柄の轢かれて挑戦してみた。

物語の中にピカソも登場し、おーっ!どうなるんだ?と長編小説ではあったが、物語の世界にどっぷり引き込まれて、一気に読破。

面白かった、、、

最後はマハさんらしく、ホッとする落とし所。

これだけアート作品、用語がバンバン出てくるのは、キュレーターであるマハさんだから描けるのだろう。

横文字一杯、知らない芸術家も一杯状態で読み進めていたが、実際に自分がその場で傍観している感覚。

 

かつてアンリー・ルソーの研究者として名を馳せていた早川織絵。

現在は実在の倉敷大原美術館の監視員として静かに暮らしている。

そんな一監視員、早川織絵に、ニューヨーク近代美術館のキュレーター「ティム・ブラウン」から、一緒に仕事をして欲しいと要望があった。

かつて早川織絵は、ニューヨーク近代美術館のアシスタントキュレーターだった「ティム・ブラウン」と共にアンリ・ルソーの『夢』に酷似している絵画の鑑定を依頼された。

2人が夢に関しての物語を解き干していき、こちらもハラハラドキドキ。

ミステリーではあるが、人間模様もほろっとする人間模様も随所に描かれていて、読みやすかった。

結果、もう一つの『夢』が悪党達に渡ることもなく、アンリー・ルソーを愛する人々に守られた。

一つの作品に対して、それを守りたい、利益を得たいという相反する思い。

作家が純粋な思いで作品を完成させた名画なのに、その作品に対して人々の色んな思いが作られ、渦巻いていくのだと怖くもあり、感慨深い思いにもさせられた。

 

アンリ・ルソーの作品は見た事がある。

と言っても、実際に展覧会を見に行った訳でもなく、どこかでふらっと見かけて、何となく印象に残っているインパクトのある作風だ。

ゴッホやピカソなどならいざ知らず、アンリ・ルソーの名前は知らないが、素人の私でも印象に残る作品。

全体的に暗い感じの色使いではあるが、陰影がはっきりした素人じみた作風。

子供が描いてるんじゃないの?という感じ。

ピカソまでいってしまうと、子供が描いたお絵かきを通り越して、岡本太郎が言わしめた「芸術は爆発だ!」となるのですが。

私にはルソーの作品はまだ庶民に近いように親しみを感じる。

 

アンリ・ルソーは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの素朴派の画家。

素朴派だの印象派だの私にはよくわからない。

素朴派とは、画家を職業としていない者が正式な美術教育を受けないまま絵画を制作している。

別の職業を生業、今で言う、趣味、副業みたいなものでしょうか?

ルソーは20数年間パリ市の税関職員を務めていたようで、余暇に絵を描いていたことから、

「ドゥアニエ(税関史)ルソー」と呼ばれていた。

ルソーの大作は税関を退職後の50歳代に描かれている。

なるほど、職業人として社会で働いていたから、ルソーの作品が私にも親しみやすいんだと勝手に納得。

アートを生業とする作家さんはどこか浮世離れしているのかなというのが、私の個人的な意見。

ルソーは美術教育を受けずに、独学で絵を描いているから、遠近法がなってないとか、影が描かれていないとか、当時の評価はすこぶるよろしく無かったようだが、良いんです!

轢かれるものがあるのですから、、、

そんなルソーの作風が好きなので、沢山ルソーの作品を観てみたくなった。

日本に作品はあるのかと調べてみたら、今度行く予定の大原美術館にあるではないですか!

『パリ近郊の眺め バリュー村』

ルソーの作品は陰影があるジャングルのイメージがありますが、この作品はフランスの農村地方を描いた作品。

ほのぼのしています。インパクトは正直ありません。いいんです!

 

大原美術館は倉敷の実業家大原孫三郎が収集した作品を展示する美術館。

西洋美術や近代美術を展示する美術館としては、日本で最初のものだそうです。

大原美術館にはアートになんかとんと興味も無かった20歳代に、有名な美術館だからちょっと覗いてみようかなぐらいな感覚で訪れたもんで、全く心にも残らず、面白く無かった〜とアートに造詣深い方からお叱りを受けそうな感想。

そんな私が再び大原美術館に今回訪れようと思ったのは『楽園のカンヴァス』を読んだから。

著者の原田マハさんがインタビューで『楽園のカンヴァス』で実在の大原美術館、展示作品ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ←(何回も噛んでしまう)『幻想』、パブロ・ピカソ『鳥かご』を出したのは、読者が実際に現地に訪れてほしいという願いからだそうです。

大原美術館、アートに貢献したいという思いから。

という私も、『楽園のカンヴァス』を読んで、マハさんの思惑通りに、実際に大原美術館を訪れて、作品を観てみたいと思った一人であります。

アンリ・ルソー作品以外にも、エル・グレコ『受胎告知』、モネ『睡蓮』と私でも知ってる作品の他、ピカソ、ルノワール、ゴーギャン、ロダンなどなど、、、

日本の作品も棟方志功に横尾忠則などの有名どころの数々を所蔵。

大原さん、どんだけ財があったのですか!!

これだけの国内外の名画満載展示されている私設美術館で、ありがたくしっかり名画を堪能してこようと思います。

アートにほぼ興味が無かった私ですが、『楽園のカンヴァス』を読んで、少し敷居の高かった美術館に訪れてみようという気になりました。

ちょっとインテリぶったりして!

私に限らず、こんな気持ちになった読者が多いと思います。

これも本というアート、作家の影響力です。

 

余談ではありますが、大原美術館の創始者、大原孫三郎氏のお孫さんは、今は亡き美人女優「大原麗子」さんだとずっと思っていました。

今回、大原美術館のことを調べてみるとそれは誤解。

同姓同名の大原麗子さんがいらっしゃいました。

これも今回の学びでした。

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