『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』  堀内都喜子 著

読書感想文

本屋さんでこの題名を見かけて思わず手に取った。

4時に仕事が終わるって?!アルバイト?そんな事はない、フルタイム。それも日本人より生産性が高い。インフラが整い格差も少ない。昨今の北欧ブーム、フィンランドといえば、ムーミンにオーロラ、サウナ、『かもめ食堂』の舞台。ゆったりと時間が流れている雰囲気もある。なんて素敵な国なんだろう。

著者の堀内さんはフィンランドに留学し、2年の滞在予定が居心地が良すぎて5年になり、帰国後フィンランド系企業で働き、のちにフィンランド大使館で働く。そんな生粋のフィンランドのエキスパート堀内さんにフインランドの真髄を教えてもらえる一冊だ。

内容

フィンランドは2018年から4年連続『幸福度ランキング1位』になった。日本もフィンランドも面積に占める森林の割合がほぼ同じだ。なのに、日本は自然が遠く感じられる。平日は仕事が定時で終わることもないし、自然がある郊外に出かけるにも時間がかかる。フィンランドは平日でもほぼ定時に帰れるので、気軽に森を散策することが出来る。身近に自然を感じ、日々リフレッシュも出来る。16時に仕事を終えるのは、フィンランド人は無駄を省き、効率良く仕事をするからだ。しかもGDPは日本の1.25倍。その根底にあるのは、ワークライフバランスだ。仕事も大事、プライベートも大事。今でこそ、日本では遅ればせながらワークライフバランスが叫ばれているが、フィンランドはずっと先をいっているのだ。

フィンランドの仕事を効率良くするとは?まずは飲みコミュニケーションが少ない。日本のように飲み会の席で上司のつまらない話も聞かなくていい。フィンランドではコーヒー休憩でコミュニケーションを取るのだ。コーヒー休憩は法律で決められている。その為、フィンランドのコーヒー消費量は世界一位。かと言って、全くそれ以外にコミュニケーションを取らない訳ではない。社外レクレーションデーが開催される。会議も社外のレストラン、カフェ、誰かの家でリラックスして行うこともある。ユネスコ無形世界文化遺産にもなった『サウナ』が裸のお付き合いで接待、おもてなしに使われることもある。

 

日本の仕事の進め方は完璧主義で細かく計画を立てる。それに比べてフィンランドは大枠で考えて調整しながら進める。そして相手を信頼して仕事を任せ、本人の意思を大事にする。そして育児休暇は男性の8割が取る。学歴や偏差値は無い。夏休みはインターンシップが盛んである。学生にとって夏休みは企業に自分を売るチャンス。日本と違い、就職活動がないので自力で動くしかないのだ。

フィンランドの人は人付き合いもシンプルだ。相手に何かあっても、そっかぁと一歩引いた人間関係を構築する。パーソナルスペースも広い。

夏休みは約1ヶ月。しっかり休むことが生産性を上げることには必要だと考えている。だから1年を11か月と割り切って仕事を効率良く、計画的に行う。夏休みにゆっくり過ごすサウナは、人口550万人に対し、その数は200万、300万。お風呂感覚でサウナに入り、9割以上のフィンランド人が定期的にサウナに入っている。日本の温泉みたいなもんだ。

フィンランドでは『自然享受権』という慣習法がある。土地の所有者に損害を与えない限り、誰もが他人の土地入りが認められ、自然の恵みを受けられる。週末になると森へベリーやキノコを採取しに出掛けたり、狩猟もする。自然の恵を簡単に享受できるのだ。

フィンランドと言えば『ヒュゲ』心地良い空間、時間だともてはやされた。しかし、今のトレンドは『シス』困難に耐えうる力、不屈の精神。日本人の頑張るという精神に似ているかもしれない。強制ではない、自分の強い気持ちからだ。フィンランドの厳しい自然がその精神を培ったのだ。でも、普段の生活はシンプルで心地よい『ムカヴァ』なひと時が多く感じられる。

勉強熱心で必要に応じていくつになっても新たなスキルを学ぶ。学びはピンチを乗り切る最大の切り札と考える。引き出しを多く持つことが、人生の選択肢を増やし、自分の振り幅を広く持つ。考えるより行動力あるのみ!そこで達成感も得られる。困難と思うのではなく、楽しみだと思うのだ。

心惹かれたところ

北欧のゆったりした感じ、『幸福度ランキング1位』ともてはやされがちだが、フィンランドにはここに至るまでには苦難の歴史があった。約100年前までは、スウェーデンやロシアに支配され、小規模な農業や森林業に従事するかなり貧しい国だったようだ。その後、何回も戦争を経験し、敗戦国となって多額の賠償金を課せられた。多くの困難を乗り越えて、成長してきた国だった。そんな歴史を微塵も感じさせなかったが、フィンランドの『シス』がトレンドとなったのは、困難を克服してきた強さを回帰し誇っているように思えた。

日本では学生留学案内所があって、丁寧に異国で何も分からない学生さんのお世話をしてくれる。そかし、著者さんがフィンランドに留学した当時にそのような施設は無かった。自力で調べてなんとかする。それがフィンランド人の気質だ。温室育ちの日本人はあたふたするだろう。かという私もそうだ。まるでいつまで経ってもお子ちゃまのようだ。旅もそうだけど、自分で調べて困難なことも楽しむ。旅が楽しく終わった後の達成感はこの上ない。

終わりに

今になってやっと日本でも叫ばれるようになった『ワークライフバランス』フィンランドは仕事も、家族も、趣味も、遊びも大事にする。しかもGDPが日本の1.25倍なんて、今まで仕事人間で頑張ってきた日本のお父さんは泣けてくるだろうな。世界を知るってのは、思った以上に大事なことだ。フィンランドの『シス』強制ではない、困難に立ち向かうのと同じように、日本の『頑張る』ってのも悪くはないし、私は誇りに思う。でも頑張りすぎず、これからはゆったりと自分の時間を大事にし、暮らせる環境が整うようになれば、皆んながもっと毎日を愛おしく暮らしていけるんじゃないかな。この本を通じてフィンランドの『ゆったり』の真髄が学べ、これからの道標になった。

ムーミンの言葉。『僕はただ平和に暮らして、ジャガイモと夢を植えたいだけなんだ。』何気ない日常が尊く、夢に溢れているんだと感じられる言葉だ。

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