『旅屋 おかえり』 原田マハ 著

旅の本

行った気分で旅の本

いつからそんなシリーズになったんか?

今回は 原田マハさんの『旅屋 おかえり』をご紹介したいと思います。

原田マハさん自身も大の旅好き。主人公が精一杯旅を楽しむ姿が周囲の人達の心を解きほぐすほっこりした気分になる物語。

あらすじ

売れない崖っぷちタレント『丘えりか』は旅とご当地グルメがテーマの旅番組「ちょびっ旅」のレギュラーを持ってる。露出は今現在この一本限り。大好きな旅が仕事になっていて神様に感謝したい気分。

しかーし!!その旅番組の唯一のスポンサー「江戸ソース」をよりによってライバル「エゾソース」と番組内で何回も連呼してしまった!!もちろん、スポンサーはお冠。即座に番組は打ち切りとなってしまったのであった、、、弱小プロダクション、唯一の所属タレント「丘えりか」がやらかしてしまった、、、

「丘えりか」の故郷は人が住む、最北端の島、北海道 礼文島。高山植物が咲き誇る北の楽園。いつか行ってみたい島だ。家族は、母と祖母は昆布加工工場で働き、弟が二人。今は亡き父は漁師をしていた。

高校の修学旅行で東京に行き、企画で東京の高校生と交流会があり、そこで礼文島メッセンジャーに選ばれた。島の家族を思い、涙ながらにメッセージを読み上げ会場は歓喜の拍手で溢れる。終了後、ヘンなおじさんが声をかけてくる。そのヘンなおじさんが「丘えりか」を見出した事務所社長、鉄壁社長であった。

鉄壁社長の強引な勧めもあり丘えりかは家族の暮らしを支える為にも高校卒業後、憧れの「海の向こう」東京へ上京することを病床の父に枕元で告げる。父は「いつかこの島を出て海のあっちに行くのはわかっとったよ。大きくなって帰ってこい」と。

「丘えりか」の東京のお父さん代わり鉄壁社長さんがええ味出してまして。いっちょうらが派手なチェックのジャケットで、ネクタイは赤。関西のノリで気は大きいことを言うんだけど実は繊細なところがある愛おしい人。意気消沈の丘えりかに任せておけ !俺がなんとかするから!とあちこちお願い行脚に出かけるも不発続き。

ある日、おかえりは電車に全財産が入った大事なバッグを置き忘れてしまい、戻ってこないと半ば諦めていた。しばらくして事務所帰ると、見知らぬご婦人が置き忘れたバックを届けに来てくださった。そこでご婦人から、病気でベッドから動けなくなった娘の為に旅に出てほしいと依頼される。実は娘さんは「ちょびっ旅」の大ファンで是非、丘えりかに満開の枝垂れ桜が咲き誇る「角館」を旅してほしいんだと。

娘さんが病気を発症する以前に、ニューヨークでの発表会で春の花をテーマにするので満開の枝垂れ桜を華道の家元の父と母と3人で見にいく旅を用意した。あいにく雨も降り、満開の桜は散っていて家元は怒って機嫌が悪くなってしまった。そんな苦い思い出を払拭したい娘さんからの依頼。幼い時から、家元の父とは師弟の関係で厳しく育てられた。唯一、親と子の関係で花を見にあちこち出かけていたが、病気になってしまい今はもう叶わない。

おかえりは経験したことのない大役に乗り気ではない。しかし、鉄壁社長が『ちょびっ旅』の最後のナレーションで「旅は出かけてみなくちゃ何が起こるか分からない。いいことあるよ、大丈夫!」ってフレーズを思い出させてくれた。よし決まり!旅屋の仕事を引き受けようと。

テレビでの旅と違って、今回は完全にひとり旅。不安いっぱいだったが、昔の旅の仲間が助けてくれた!角館の旅はさまざまな出会いや偶然に導かれ晴天の空の下、見事に満開な枝垂れ桜をカメラに収めることができ、旅は大成功となった。

これを機に旅屋を生業としていくおかえり。大盛況な様子が、以前『ちょびっ旅』のスポンサーだった『江戸ソース』の女会長の耳に入り、旅屋を依頼される。旅が成功したら、またスポンサーになってもいいという条件だったが、いつも前のめりな社長がいつもと違い、黙りこくっている。その依頼とは、、、

心惹かれたところ

この旅でも色んな人と出会う。お世話になる温泉宿の若旦那は、奥さんに子供3人を置いて出ていかれ、実家の温泉旅館を両親と切り盛りしながら子供を育てている。この若旦那がイケメンで少々恋心を抱いたり。「無意味な旅なんてねえべさ。旅に出てみんな必ずなんがどごみつけて帰っていかっしゃる」と、ふにゃーと心が温かくなるような方言混じりで語ってくれる。この若さで心が折れるようなこともいっぱいあっただろうに、、、この宿を好きで実直に守ってきた人柄が滲み出ている。こんな人、言葉との出会いも旅の醍醐味なんだ。

ここでは依頼主の家元の父、おかえりの今は亡き父、そして東京の父代わりの鉄壁社長3人の父が登場する。みんな不器用だが、娘を思う愛情は深い。依頼主の家元の父は娘に気づかれないように、隣の病室をずっと借り上げ、せめて香りを楽しんでもらおうと、動けない娘のために花を生け続ける。娘を無下になんか決してしてないんだ!ここで、うるっと、、、鉄壁社長がおかえりと空港で再会するシーンはぽろぽろ泣けた、、、最近、こと親子関係の愛情に触れると涙腺崩壊である。

旅は「いってらっしゃい」と送り出してくれて「おかえり」と迎え入れてくれる誰かがいるから完結するのだと。旅そのものが自身の人生となったおかえりの言葉だ。

最後に

おかえりはテレビの向こうの視聴者さん、レンズの向こうの依頼主さんを思い、精一杯旅を楽しむ。そんな姿が周りの人の心の強ばりをほどき笑顔にしていく。おかえり自身も周りから元気をもらい、桜の開花や天気まで味方につけてしまうパワー!!

今、置かれている状況に集中し、楽しむことが人生を豊かにしていくことだと感じられたお話でした。凄くいい本に出会えて、また旅に出るのが楽しみになりました♪旅で、そしておかえりに元気をもらいたい方にオススメの一冊です!

お知らせ!!

紹介したこの「旅屋 おかえり」が2022年にNHKでドラマ化決定!!主演は個性派俳優の安藤サクラさん。その他のキャストも発表されていて、、、ふむふむ。。。楽しみであります♪

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